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東京高等裁判所 平成11年(ネ)1153号 判決 1999年6月24日

東京都府中市南町一丁目三番地の七

控訴人

有限会社ハラダゴルフ

右代表者代表取締役

原田喜代春

右訴訟代理人弁護士

高橋修

東京都中野区本町一丁目三二番二号

被控訴人

シチズン商事株式会社

右代表者代表取締役

神谷明

右訴訟代理人弁護士

〓井参也

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実及び理由

第一  当事者の求めた裁判

一  控訴人

原判決を取り消す。

被控訴人は、原判決別紙目録記載のキャディバッグを販売してはならない。

被控訴人は、控訴人に対し、金七五〇万円及びこれに対する平成一〇年二月二五日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人の負担とする。

二  被控訴人

主文と同旨

第二  事案の概要

事案の概要は、次のとおり当審における控訴人の主張を付加するほかは、原判決の事実及び理由の第二 事案の概要のとおりであるから、これを引用する。

(当審における控訴人の主張)

一  控訴人は、キャロ社を創立して、新しい形態のスポーツ用品のモデルを研究・開発し、それらを米国においてはキャロ社が、米国を除く国と地域においては控訴人がそれぞれの市場において商品化して販売することを企画した。控訴人は、この目的を達成するために、キャロ社の資本金のほとんどを出資しただけでなく、控訴人の取締役の地位を保持したままの状態で宮下幸徳をキャロ社に派遣し、同人を同社の副社長に就任させて右研究・開発に当たらせていた。控訴人は、キャロ社の事実上のオーナーである。

また、控訴人は、キャロ社の商号である「キャロ・デポルテ」の名称を日本において商標登録しており、韓国において、自由にキャディバッグを製造して商品として販売してきた。

ボクサー型バッグの独特の形態は、宮下幸徳が控訴人からバッグの木型等の提供を受けるなどの協力の下に考案したものである。

二  ある品物を開発して、「売買の目的たる財貨」の形態を整えただけでは、商品化したとはいえない。なぜなら、現実に市場に流通させなければ、模倣品と市場において競合する状態にならないからである。

キャロ社は、米国において、新バッグを創作した者ではあろうが、これを日本の市場において商品化するためには何の資金も労力も投下せず、また、新バッグの売買を日本においてビジネスとして成立させるためのリスクも全く負担しておらず、これを日本の市場において商品化し、その販売をビジネスとして成功させたものではない。これに対して、控訴人は、新バッグの開発を企画し、これに関与しただけではなく、その販売を日本の市場においてビジネスとして成功させた者である。

したがって、日本国内において、不正競争防止法二条一項三号所定の不正競争の差止及び損害賠償の請求権者は、控訴人でなければならない。

第三  当裁判所の判断

当裁判所も、控訴人の本訴請求は理由がないと判断するところ、その理由は、次のとおり当審における控訴人の主張に対する判断を付加するほかは、原判決の事実及び理由の第三 当裁判所の判断と同じであるから、これを引用する。

(当審における控訴人の主張に対する判断)

一  控訴人は、キャロ社の資本金のほとんどを出資したことを始めとして、キャロ社と控訴人の関係やスーパーラップ型キャディバッグの開発に関してるる主張する。しかし、控訴人の主張によっても、控訴人自身がスーパーラップ型キャディバッグの形態を開発・商品化したということはできないから、控訴人の主張は理由がない。

二  控訴人は、控訴人がスーパーラップ型キャディバッグを日本の市場において販売したことをもって、これを日本において商品化した旨主張し、これを前提として、控訴人は、不正競争防止法二条一項三号によって保護される営業上の利益を有する旨主張するものと解される。しかし、不正競争防止法二条一項三号の規定の趣旨からして、控訴人が右のような利益を有するということができないことは、原判決の事実及び理由の第三 当裁判所の判断一2(二)のとおりである。

なお、一般に、商品とは、売買の目的物たる財貨という意味であって、右にいう商品の形態の開発・商品化とは、最初に販売する以前にされているものであるから、控訴人は、「商品の形態を開発・商品化した者」には当たらないというべきである。しかし、仮に控訴人の用語の定義に従って、控訴人がスーパーラップ型キャディバッグを日本の市場において販売したことを「日本において商品化した」と称したところで、控訴人の主張する資金・労力の投下がスーパーラップ型キャディバッグを自らが日本の市場において販売するに当たっての販路の開拓・拡大に関してされたものであるという事実関係に変わりがない以上、控訴人の主張は、やはり採用することができないものといわざるを得ない。

第四  結論

よって、原判決は相当であって、本件控訴は、理由がないから、棄却することとし、控訴費用の負担について民事訴訟法六七条、六一条を適用して、主文のとおり判決する。

(口頭弁論終結日 平成一一年五月一八日)

(裁判長裁判官 清永利亮 裁判官 山田知司 裁判官 宍戸充)

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